災いは大概予兆なくやってくるんですよ。


血に濁点で「ぢ」のイメージだ。静脈流のような赤褐色の明朝ボールドがなんだか痛そうだ、繁華街の薬屋の看板を見てはいつもそう思ったものである。あんなデリケートな校門が、いや黄門が、じゃない肛門がいぼったり切れたりするなんて、すこし考えただけでも恐ろしい。そもそも、バイのネコでもないのにどーしてあんなところがそんな不健康になるのかぜーんぜんわからない、わかっていなかった。後にこんな苦しみを知るとは夢にも考えていなかった、根拠もなく、若かったなフッフフ。

それは唐突に現れた

忙しくしていた晩夏のある日、起床しトイレに入った。大きいのをいたすためだ。本体の前のガス放出の際、すこし違和感をかんじた。「?、なんかむずい…」やがて大が出力される。通過中もなんだか放出穴の左脇のあたりがむず痒く違和感がある。寝汗のかきすぎか?そう、オレはアトピー体質なので多汗などちょっとしたことで皮膚が荒れることがある。またその類いだろう。まだ頭は寝起きでぼんやりしているが、用は済んだようである。無意識にかるく腰を上げ「おしりウォッシュ」ボタンを押していた。「ブーン」とノズルが伸びシャワーが出はじめ、


「っぐ!ぎぃいい…」


痛い!痛さの王様と呼ばれる尿管結石の発作でも、自分でタクシーを捕まえ救急外来まで己を運んだ痛みににぶい 強いオレが声を漏らすほどだ、客観的にも激痛と言ってよいはずだ。つーか、痛い、シャワー=弱でも痛い、なんだなんだ、なんなんだ?ともかく停止、洗浄停止!そぉーっと紙で水を吸い取り、恐る恐る違和感ポイントに指を触れてみる。ん?なにかぷくっとした膨らみがある。視覚を伴わない指先の感触ではやけに巨大に感じられるが、実際はそれほど大きくもないようだ。ちょっとした錠剤、キューピーコーワゴールドぐらいの大きさだろうか。軽く押してみると柔らかく何かと同じ記憶がある。これは・・・、まめ?モトクロスコースでがちがちになってるときに掌に出来るできるあれ、薄皮が柔らかい状態のできたてのまめだ。「なんでおけつに水疱が?」と思いながらくっと押してみるとぷにっと強い弾力とともに「!!」またも痛みが走る。中腰のくの字がびくっと開いたに違いない。朝から尻丸出しで「?」と「!」だらけなのである、何をしているのか自分でも見失いつつあった。


大いなる不安

ひとまず尻を納め、手を洗おうとすると指先がなにかぬるっとしていた。「ま、まさかのう○こ付着?」残っていたのだろうか、いや色味的には違うようだし、慎重にしんちょ〜に鼻を近づけてみても、あのかぐわしい香りは微塵もない。が、またもいやな記憶をかすめるかすかな匂いが・・・。


「膿?」


お、おれのしりはどーなっているんだ・・・
自分では目視ができない部分でもあり、オレの心に急速に暗雲が垂れ込めてくるのだった。


きっとつづく